与えられたちゅうぶらりん
ドリーム小説 好きですとひと思いにそう言ったなら、それを鼻で笑ってくれたならこんな未練は残らなかったのだろうか。
私でも何か彼を引きとめる鎖になったのだろうか。
彼の中を埋めるものになったのだろうか。

世界を憎み自分の生に執着し、けれど自分もろとも、自分が欲しかった世界全てが消えてしまえばいいと思っていた彼。
虚無的で流されてばかりで、それを望んだ私とは全く違う。
鮮やかで激烈で鋭利だったシンク。
私の好きだった人。

っ!!!!!」

「はいっ!」

譜業で浮く椅子に乗りキーキーと指示をするディストを一瞥して、火を消して回り、さらに時間がたつと危なそうなものの蓋をしてから動く。
ディストは確かに天才なのだろうけれど、どうにも細かなことが出来ない。
放っておくと、結果は出ても周囲の損失が激しくなる。
何回か爆発やら机の溶解に巻き込まれた結果、そのことにはとても注意するようになった。
というかディストを痛めつけた後の渋い顔をした死霊使いに頼まれた。良く来るフェミニストなガルディオス伯爵に心配された。

これも少し前には考えられないことだ。
敵ではないけれど決して味方でもなかったマルクトでフォミクリ―の研究に携わることになるとは。
ある意味で自分の研究。
そして死霊使いとディスト――譜業のネイス博士は私の生みの親となる。
二人の仲は壮絶に悪いが。

私はそんな二人の手足として働いている。
戦闘能力皆無で七歳児で外見十二歳のレプリカが助手―六神将の生き残った部下にしては良い扱いだと思う。
そしておそらくレプリカにしては導師イオンのレプリカであるフローリアンに次いで。
以前からディストの手伝いには駆り出されていたので勝手は解っているし。
おそらくは死霊使いの意向なのだろうけれど私の存在を覚えていたこの人にも有難いと思う。
だからってキーキー叫ぶな死霊使いに喧嘩売るな。後片付けを学べとは思うけれど。

ねえ、アリエッタ。私はそこそこに幸せです。


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